第13回俳句「夏の32句」『目にしみる迎える夕べや百合の花』

Posted in 和田和園の俳句 2025-2026 計414句 with tags , , , , , , , , on 19 July 2026 by kenwada

皆様、こんにちは、和田和園です。
今回は再び伝統俳句の様式で、夏の句の第二弾をお届け致します。

【千百メートルの盆】
和田家の盆は七月なり (三句)
1 目にしみる迎える夕べや百合の花

2 ひとときをわが家に過ごす先祖かな

3 先祖ゆく森にひびくや宵の歌

亡父よぶ庭に百合咲く夕べかな
火を焚けば先祖登るや夏の星
蜩や父の愛せし庭の百合
(あえて季重なりです)
山百合や暮れゆく森の声満ちて
先祖還る森にひびくや暮れの歌
先祖ゆく森に煙るや夏の星

(七月盆の家は門火、迎火、送火の季語を使えず、俳句を作る上で誠に制約多く不自由なり。百合は亡父の好きだった庭に咲く白百合なり、決して花瓶の花に非ず。また同じく蜩も夏に使えず甚だ不便なり。実際に寒冷地の森で蜩が鳴くのは七月にて秋に非ず。送火の蜩の音響効果を「宵の歌」とするなり。)

正岡子規氏の「病牀六尺」の中に、
「⚪︎七月十一日。晴。始めて蜩を聞く。
梅雨晴や蜩鳴くと書く日記 (七月十五日)」(ワイド版岩波文庫、p.106)
という一節があります。
明治35年の根岸では、7月に蜩が鳴いていたという事実とともに、季重なりであることをも含めて、この句をどのように考えたらよいのであろうか?

4 小野上や田植始まる芒種かな
(目の前の実際の風景そのものなのですが季重なりです。小野上は渋川市にあります。)

5 野茨(のいばら)や清楚で可憐薫りよし

6 今朝もまた目覚めし我と花いばら

とどのつまり
7 自生種の強さ際立つ夏の庭

六月十三日
8 甥来たる幼き子連れ桜桃忌

「女生徒」を読みて
9 山形の坑夫がくれし百合の花

(僕が太宰さんの作品に惹かれるのは、世によく言われているところのいわゆる無頼派、破滅型、デカダンスなイメージとは違ってと言いますか、むしろその真逆で、その作品の中に明るさや逞しさを感じるからです。諧謔、ユーモア、滑稽、笑い、皮肉、機知、ウィット、ペーソス等々を感じるからです。僕にとってのこれまでの No.1 作品は常に「津軽」でしたが、奥様の書かれた「回想の太宰治」(講談社文芸文庫) を読んでから、「新釈諸国噺」次いで「お伽草子」ときまして、この人は天才としての能力の桁が違うなと思い、さらにこの「女生徒」はすごい!才能が爆発していますね、ものすごくヨーロッパ的なものを感じます。「葉桜と魔笛」どうですか!「きりぎりす」こそは必読の作品なのではないでしょうか。次は「パンドラの匣」にいきますが、なにゆえ太宰さんと言えば、すでに僕が子どもの頃から、まずは「人間失格」という判で押したような紋切り型なのでしょうか?まずは「お伽草子」という出版業界の大変革は今後もなされないのでしょうか?少し長くなりましたが、今日はお命日ですのでご勘弁。注:桜桃忌は毎年六月十九日に修されます。)

10 鳥集い舞いて騒がし桜の実

11 実桜や鳥を養い落ち果てり
(聖書の一節を思い出します。)

12 結葉や空にモザイク描きけり
結葉の空にコラージュ描きをり
結葉や空のモザイク動きをり
(関連作品として昨年11月の『第1回「俳句を詠み始めて」(処女作品)』の中に「キャンバスを使い切りたる空の人」。ここは「描きをり」「動きをり」の森の現在進行形のライブ版でいくよりも、「描きけり」で完結してしまった方がいいように思ったのですけれども、それには僕の個人的な性格もあるのかな?でもここはあえて完了形でいきたい。)

13 理由(わけ)もなく心落ち込む茂りかな
理由もなく心沈める茂りかな
心ふと沈みゆく日の茂りかな

14 我が庵(いお)の宵に浮かびぬ額の花
我が庵の闇に浮かびぬ額の花
我が庵に白く浮き立つ額の花
我が庵に今年も咲きぬ額の花
(平板な挨拶句)
八株の自生種強し額の花

15 夕闇に浮かぶや白き額の花

16 石楠花や誰(た)にも知られず咲きにけり

ショートステイ中
17 梅雨寒や独り座りし母の部屋

18 梅雨寒に独り祈りし神社かな
ひっそりと梅雨の神社に我ひとり
(無人の神社にいることほど、心が落ち着くことも他にはあまりないように思います。そして、この地域にはパワースポットのような実に素晴らしい神社がたくさんあります。そして、そのような神社ほど実際は派手なところもなく、あまり目立ちません。やっぱり、日本人は全国津々浦々、草深いところほどまずは先に神への信仰ありきで、その後、次第に仏教が全国に浸透していったのではないのでしょうか?写真は応桑諏訪神社です。)

19 二年目に初めて会いし薔薇の花
(薔薇がお好きな方はよくご存知だと思いますが、新苗を植え付けた場合、株を太らせて大きくするために、一年目の花は蕾の時点で必ず摘み取ります。そのため二年目にして初めての花との面会となります。今年も5株の薔薇の花との初対面がありました。写真はつるバラの群舞です。初案は上五「二年(ふたとせ)」でしたが、最終案は普通に「二年目」にしました。同じく初案は中七「初めて咲きし」「初めて咲きぬ」。中七「会いし」に「愛し」を掛ける。)

20 梅雨晴やどこか遠くの草刈機

21 屋根たたく雨に目覚めり梅雨の夜
雨降れば雨に眠れぬ梅雨の夜

ワールドカップ
22 異次元の白夜の夢かハーランド
北欧の白夜を祝うハーランド
この夏の異次元なりしハーランド
ハーランド夏の夢来ぬ規格外

23 切り札や老いたる母の水羊羹
切り札の母を養う水羊羹
あれもだめこれも食べれず水羊羹

24 義実家の暑さ届けるなすび哉
丸茄子や実家の朝を運び来ぬ

25 バス停の大空狭し夏燕

26 子を思ひ飛び交ふ空や夏燕
子の為(ため)にどこまで飛ぶや夏燕
幾度(いくたび)も餌をくわえし夏燕
日に何度餌を運びぬ夏燕

七月十一日夕刻
27 鶯や仕舞いの声を聞かせけり

28 一日を赤紫蘇洗い過ごす妻

29 梅を干す妻が使いし母の笊

30 潔し今朝の蕾や花菖蒲
(初案は上五「凛として」。)
今朝までの莟(つぼみ)開きぬ花菖蒲

31 群れ咲きて岡虎尾(をかとらのを)の白き波

32 虎尾草(とらのを)の波の揺れあふ夕べかな
虎尾草のうねり激しき我が庭よ
虎尾草の波打つ大地のうねりかな

2026年7月19日
和田和園

Summer Garden Painting 2026 No.1

Posted in Works 2026 with tags , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , on 17 July 2026 by kenwada

サマーガーデンペインティング 2026 No.1
2026年7月
北軽井沢 作品 No.610
紙に水彩、鉛筆
24.2×33.3 cm

Summer Garden Painting 2026 No.1
July 2026
Kitakaruizawa Works No.610
Watercolor and pencil on paper
9.5×13.1 in.

Peinture d’un jardin d’été 2026 N°1
juillet 2026
Kitakaruizawa Œuvres N°610
Aquarelle et crayon sur papier
24.2×33.3 cm

第12回俳句「これからの新しい方向性についての70句」『手があたたかい冷たくならないでね』

Posted in 和田和園の俳句 2025-2026 計414句 with tags , , , , , , , , on 7 July 2026 by kenwada

皆様、こんにちは、和田和園です。
先日、ふと思いましたが、「芸術」の対義語は「認知」なのではないでしょうか。

さて、俳句の勉強を毎日するようになってから、強制されることもなにもなく自然に少しずつそのようになっていったのですけれども、次第にもう少し散文調の現代詩風なとでも言いますか、口語で真率に言い流すスタイルの俳句を自分なりに模索するようになりました。
その際に、これには明確な理由があるのですが、思い切り崩したこれまでの自由律俳句ではなく、①あくまでも十七音は逸脱しない、②あくまでも正岡子規氏の写生の精神を基本とする、③そしてこれは努力目標になりますが、原則としてでき得る限り季語は入れるという形で、もう少し新しい形の俳句ができるのではないかと思いました。
これを僕の仕事の場合に当てはめますと、さらっと流す水彩画の感じですね、こてこての厚塗りの油彩画ではなく。
そして今年の五月で、もう六十三歳になりましたので、古希を迎える頃までに、北軽井沢の自然や生活を俳句という形で、少しでも書き残しておきたいと思いました。

これには、これまでのいわゆる伝統俳句に対するはっきりとした自分なりの考え方がその根底にあるのですが、ただ伝統俳句の基礎基本の土台をおろそかにしますと、いわゆる散文調のお馬鹿な俳句や詩になりますので、伝統俳句に対する部分は今までと同様に気を入れて勉強を続けていきたいと思います。

ここで改めてお断りするまでもなく、これはあくまでも自分なりにということですが、この新しい方向性が「あ、できるな」と思いましたのは、ある朝、庭を歩いていて、はまなすの前へ来た時に、ごく自然に「はまなすのにおいをふかくすってみる」という一句がふっと浮かんだ時でした。
今回は、これまでに書き貯めてきました新しい方向性の俳句についてまとめてみました。
なにしろ先生もいませんし、暗中模索の独学ですが、皆様のご感想はいかがでしょうか?

1 はまなすのにおいをふかくすってみる

2 かっこうがないている亡き人のため

3 梅雨空に森と僕とで息をする

4 僕は見たハチがクモのはらを刺した

5 僕はくれまちすほど知らないのです

6 クレマチスがクレマチスと話してる
(クレマチスがほらクレマチスと話す)

7 バカナレババカノママニテオワリマス

8 コネコみてためらいましたゴメンねと

9 戦前の夏のことです樺太の

10 いもうとが静かに来たり夏の宵

11 いもうとは生きていますかどうですか
(それはタダいもうとのタメでイジョウです)

12 ひたすらにあねは愛してくれました

13 この写真おぼえていますあねのこと

14 まっすぐなあやめのようでありたいな

15 野あやめがただまっすぐに咲いている

16 野いばらが呼んでいる近づいてみた

17 野いばらに呼ばれて顔を洗う朝

18 野いばらはなにひとつ欲しがりません

19 茨になにも要りませんと言われた

20 山椒がずいぶん伸びて届かない

21 真夜中の光がサッと差していた

22 アトリエの前のバラが赤いのです

23 鶏小屋に鳥が入って慌てめく

24 愛犬に心まで噛まれて痛い
(この子がうちへ来た日を思い出した)

25 雌鶏が死ぬたび墓が増えてゆく

26 蛇が道に死んでいた墓を掘った

27 芍薬の花が重たく咲いている

28 高崎の眼科にゆく朝が早い
(朝早く高崎まで眼科にゆく)

29 僕より森の方が息をしている

30 時々森をずっとじっと見ている

31 また梅雨が来る梅雨の梅雨がまた来る

32 森が聞こえなかったふりをしている
(出たことを知らせる無線がまた鳴る)

33 六月にあかいもみじがあるのです
(もみじの葉がすでにあかくなっている)

34 猫があるじのような顔をして来た

35 這っている毛虫を小鳥が食べない

36 介護休暇になぜか恥ずかしくなる

37 花が終わればまた次の花が咲く
(花は咲く順番をよく知っている)

38 七歳の雌鶏に卵をもらう

39 母にご飯を食べさす朝昼晩

40 雨が降ると猫が遊びに行かない

41 猫がしきりに甘えにくる梅雨空

42 鶏(とり)は天気予報よりも知っている

43 蛙がぺちゃんこになっていた小道

44 散歩する人が減った今年の森

45 たんたんとした静かなラジオがいい
(もり上げようとするラジオの悲鳴だ)

46 新聞を読んだたいした記事がない

47 祖父母の団扇が二枚あるきりです

48 一本道を墓まで歩いてみる

49 きのうの落花生だ湿気ている

50 ラジオを消せば鳥の声が聞こえる

51 昼食に六年もかかってしまう

52 ずいぶん悲しい思いをさせる日だ

53 独活が信じられないほどでかくなる

54 人が皆猫よりずっと病んでいる

55 梅雨寒の神社に祈る人がいる

56 鳥が鳴いている激しく鳴いている

57 猫が獲物をくわえた時の声だ

58 夏至にもう薪の心配をしている

59 好きな方へと伸びてゆく枝と枝

60 飛行機ではありません大鷲です

61 熊がこわくてジョギングができますか

62 ええ昭和三十八年生まれよ

63 カニキュルメールするパリは四十度
(canicule)

64 セラヴィなりコムスィコムサのカイゴかな
(c’est la vie, comme ci comme ça)

65 梅雨と暮らしている雨雨雨雨

66 年取れば青春想う別角度

67 いつも真面目純真の黒猫です

68 手があたたかい冷たくならないでね

69 時々どうしたらよいのかと思う
(誰も注目しない思い入れです)

70 僕はただだめもとで問いかけている

2026年7月7日 小暑・七夕
和田和園

Today’s Drawing Photo on July 6, 2026

Posted in Essay 2012-2026 with tags , , , , , , , , on 6 July 2026 by kenwada

Acrylic on canvas, 29.0×24.0 in. (72.7×60.6 cm)

Today’s Drawing Photo on July 5, 2026

Posted in Essay 2012-2026 with tags , , , , , , , , on 5 July 2026 by kenwada

Acrylic on canvas, 29.0×24.0 in. (72.7×60.6 cm)

Today’s Drawing Photo on July 2, 2026

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Acrylic on canvas, 29.0×24.0 in. (72.7×60.6 cm)

Today’s Drawing Photo on July 1st, 2026

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Acrylic on canvas, 29.0×24.0 in. (72.7×60.6 cm)

Today’s Drawing Photo on June 29, 2026

Posted in Essay 2012-2026 with tags , , , , , , , , on 29 June 2026 by kenwada

Acrylic on canvas, 29.0×24.0 in. (72.7×60.6 cm)

Today’s Drawing Photo on June 28, 2026

Posted in Essay 2012-2026 with tags , , , , , , , , on 28 June 2026 by kenwada

Acrylic on canvas, 29.0×24.0 in. (72.7×60.6 cm)

第11回俳句「夏の20句」『丘はみなキャベツばかりとなりにけり』

Posted in 和田和園の俳句 2025-2026 計414句 with tags , , , , , , , , on 27 June 2026 by kenwada

皆様、こんにちは、和田和園です。
夏の句の第一弾をお届け致します。

わが家に自生せる風車が今年も終わりて (二句)
1 裏庭の宴果てしや風車

2 裏庭に幾とせ住まひ風車

六月五日夕刻 (二句)
3 春蝉に押しつぶされし我が心

4 春蝉や知り尽くしたる命果て

5 このあたりなにゆえ多い雀蜂

6 虻噛めば一週間の我慢かな

7 虻多し去年(こぞ)は七発食われたり

8 ただそっと白き花咲く五味子かな
(五味子とは庭に群生している朝鮮五味子のことです。朝鮮五味子は季語としては認められていないため、この句は厳密には無季俳句になりますが、僕の好きな作品です。季語を入れて「ただそっと五味子の白き花涼し」では没。)

六月七日、梅雨入りしたニュースをラジオで聞いて
9 風やみて鳥なきやみて梅雨入(ついり)かな

10 森はただ静かなりけり梅雨曇(つゆぐもり)

11 静けさや半鐘蔓(はんしょうづる)に雨の音

「レ・ミゼラブル」に寄せて
12 コゼットが現れそうな森の梅雨

13 十六度夏を迎える介護かな

お隣の嬬恋村の「愛妻の丘」に立ちて
14 丘はみなキャベツばかりとなりにけり

ゴッホへのオマージュ
君はただ描いたのだろう麦畑
(この作品は、『第1回「俳句を詠み始めて」(処女作品)』の中で、昨年11月にすでに発表した俳句ですが、14番の俳句とここに並べてみました。)

15 アトリエに独り籠れば青葉闇

去年までとは違う今年の森なり (二句)
16 鈴の音の日課せわしや夏木立

17 風薫る森を切り裂く無線かな

どこかフランスに似ていて
18 てつせんの花が静かに聞いている
(風にゆれ耳をすまして咲いている)
(フランスを思い出すなりクレマチス)

19 この森もクーラー買いぬ母の部屋
(中七「クーラー」か「冷房」か、どちらの4音にするかをずいぶん考えました。)

20 生命の躍動重し夏の庭

2026年6月27日
和田和園