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第10回俳句「この季節の30句」『誰(た)がための森の遠音や閑古鳥』

Posted in 和田和園の俳句 2025-2026 計291句 with tags , , , , , , , , on 5 June 2026 by kenwada

皆様、こんにちは、和田和園です。
独学で俳句を始めてから、七ヶ月が経ちました。
前回の第9回にも書きましたが、寒冷地の当地の森は温暖地とはかなりのタイムラグがあり、そのために、今の時期は春と夏の季語が自然と入り交じるような非常に繊細な季節になっています。

1 そっと散りそっと葉桜山桜
(ヤマザクラソメイヨシノトチガイマス)

2 うつむけば苧環の花涙あり

3 鶯に郭公競う若音かな
(この句は俳句としては季重なりですが、今日2026年5月16日の朝9時、目の前の森で起きた寒冷地の事実そのものです。と言いますか、別に日時にこだわる必要もなく、ほぼ毎日これが繰り返されていますので、俳句に詠んでみました。)

4 郭公や森を指揮する遠音かな
(郭公の鳴き声は、いつも何か遠いところから、そしていつも何か高いところから聞こえてきます。森の奥深くから響く郭公の澄んだ鳴き声は非常に美しいです。)

5 郭公や森の指揮者がタクト振る

6 誰(た)がための森の遠音や閑古鳥

7 郭公がカッコウと鳴く平和かな
(この句は戦争ばかりしている世界へのアンチテーゼとして作りました。当たり前のことが当たり前に行われていない世界に対しての。)

8 カッコウと郭公が鳴く日和かな
(俳句としては、下五「日和かな」の方がおさまりがよいかな、俳句としてまとまっていて。それから、カッコウ、カッコー、かっこう、かっこーのどの表記を選ぶかで迷いました。いずれも4音です。)

9 春蝉に出番を取られ閑古鳥
(この句も同じく季重なりですが、事実そのものを詠んでみました。ちなみに参考までに、今年の当地のそれぞれの初音は、鶯が5月7日、郭公が5月11日、春蝉が5月15日でした。過去6年分の初音の日をノートに記録してあります。)

10 春蝉のオーケストラに閑古鳥
(初案の中七「弦に独唱」では少し固い、詰め込み過ぎですが、この最終案の中七にも依然として不満です。)

11 春蝉や沈み切りたるわが家かな
(この大音量を初めて聞いた人は、一体何の音だと、かなりびっくりするのではないでしょうか?上五「や」か「に」か未だに決めかねています。「や」で一回切るか、わかりやすく「に」でいくか。中七に、春蝉の大合唱に我が家が埋没するという下向き感覚のベクトル↓を必要としました。)

12 雌鶏に春蝉の殻集めけり
(雌鶏の大好物かつ貴重な蛋白質源です。ものすごい奪い合いになり、それこそあっという間に食べてしまいます。あえて我が家の庭の「春蝉の殻」にこだわりました。当たり前に「空蝉」でもっていきたくなかったのです。)

13 ひんやりと春蝉やみて太宰読む

14 新緑や時に重荷となりにけり

15 なにゆえにそんなに急ぐ山若葉

16 駆け巡る光やまぶし山若葉

妻庭に降り立ちて
17 山独活や採りて五分の肴かな
(山独活、蕗の薹、蒲公英、蓬、タラノメ、ウルイ、コゴミ、ヤマドリゼンマイ、ハリギリ、春紫苑・・・我が家の庭は山菜だらけです。)

18 運命はそれぞれにあり朴葉鮓

19 波打てる蓮華躑躅や黒揚羽

20 海原の蓮華躑躅の中をゆく

21 森はただ青葉青葉となりにけり

22 黒猫の青葉まぶしや熟寝(うまい)かな

23 象虫の宝庫となりぬ夏の森

わが家の裏庭に自生せる日本のクレマチスの原種たる風車をおもふ (六句)
24 紫に五月を染めて風車
(紫に染め抜きたるや五月かな)

25 風車薄紫の五月来ぬ
(風車五月を染めてどこへゆく)

26 夢に似て五月の朝の風車

27 紫の煙たなびく五月闇
(風車紫煙る五月かな、では平板ですね、普通。紫の煙たなびき五月来ぬ)

28 五月雨に色香を増せり風車
(「五月雨」は旧暦五月に降る長雨ですので、新暦の五月下旬からと考えて詠んでみました。風車が雨にしっとりと濡れて色香が増す姿は、非常に美しいです。五月雨にピアノが似合う風車)

29 五十(いそ)の輪の紫煙る初夏の森
(昨年も62個咲いてくれましたので、上五は事実そのものなのですが、問題は「五十の輪」とした時に、多くの人がそれは風車のことだとわからないのではないでしょうか?前書きがないと、この俳句だけボンと出されてもわからないのではないだろうか。そこで、例えば「裏庭に自生せる風車をおもひて」とでも前書きをしておいて、さて俳句そのものには「風車」がないというのが気になる。でもまあ、俳句としてはこれが一番よいかな。前書きにつきましては、「久保田万太郎俳句集」(岩波文庫)を読んだ時に学びました。)

30 子を抱けば雌鶏二羽の四月かな
(三鷹のご自宅の縁側で素顔を見せる死の二ヶ月前の太宰治さんの写真を見た時に、何かちょっと説明しがたい非常に強い印象を受けました。写真向かって左側から、長女の園子さん、次女の里子さんを抱き上げる太宰さん、手前に白い雌鶏が二羽写っている昭和二十三年四月の写真です。園子さんが雌鶏を見ている写真と、園子さんがカメラマンの方を向いている二枚の写真があります。)

2026年6月5日
和田和園