第12回俳句「これからの新しい方向性についての70句」『はまなすのにおいをふかくすってみる』

皆様、こんにちは、和田和園です。
先日、ふと思いましたが、「芸術」の対義語は「認知」なのではないでしょうか。

さて、俳句の勉強を毎日するようになってから、強制されることもなにもなく自然に少しずつそのようになっていったのですけれども、次第にもう少し散文調の現代詩風なとでも言いますか、口語で真率に言い流すスタイルの俳句を自分なりに模索するようになりました。
その際に、これには明確な理由があるのですが、思い切り崩したこれまでの自由律俳句ではなく、①あくまでも十七音は逸脱しない、②あくまでも正岡子規氏の写生の精神を基本とする、③そしてこれは努力目標になりますが、原則としてできうる限り季語は入れるという形で、もう少し新しい形の俳句ができるのではないかと思いました。
僕の仕事の場合に当てはめますと、さらっと流す水彩画の感じですね、こてこての厚塗りの油彩画ではなく。
そして今年の五月で、もう六十三歳になりましたので、古希を迎える頃までに、北軽井沢の自然や生活を俳句という形で、少しでも書き残しておきたいと思いました。

これには、これまでのいわゆる伝統俳句に対するはっきりとした自分なりの考え方がその根底にあるのですが、ただ伝統俳句の基礎基本の土台をおろそかにしますと、いわゆる散文調のお馬鹿な俳句や詩になりますので、伝統俳句に対する部分は今までと同様に気を入れて勉強を続けていきたいと思います。

ここで改めてお断りするまでもなく、これはあくまでも自分なりにということですが、この新しい方向性が「あ、できるな」と思いましたのは、ある朝、庭を歩いていて、はまなすの前へ来た時に、ごく自然に「はまなすのにおいをふかくすってみる」という一句がふっと浮かんだ時でした。
今回は、これまでに書き貯めてきました新しい方向性の俳句についてまとめてみました。
なにしろ先生もいませんし、暗中模索の独学ですが、皆様のご感想はいかがでしょうか?

1 はまなすのにおいをふかくすってみる

2 かっこうがないている亡き人のため

3 梅雨空に森と僕とで息をする

4 僕は見たハチがクモのはらを刺した

5 僕はくれまちすほど知らないのです

6 クレマチスがクレマチスと話してる
(クレマチスがほらクレマチスと話す)

7 バカナレババカノママニテオワリマス

8 コネコみてためらいましたゴメンねと

9 戦前の夏のことです樺太の

10 いもうとが静かに来たり夏の宵

11 いもうとは生きていますかどうですか
(それはタダいもうとのタメでイジョウです)

12 ひたすらにあねは愛してくれました

13 この写真おぼえていますあねのこと

14 まっすぐなあやめのようでありたいな

15 野あやめがただまっすぐに咲いている

16 野いばらが呼んでいる近づいてみた

17 野いばらに呼ばれて顔を洗う朝

18 野いばらはなにひとつ欲しがりません

19 茨になにも要りませんと言われた

20 山椒がずいぶん伸びて届かない

21 真夜中の光がサッと差していた

22 アトリエの前のバラが赤いのです

23 鶏小屋に鳥が入って慌てめく

24 愛犬に心まで噛まれて痛い
(この子がうちへ来た日を思い出した)

25 雌鶏が死ぬたび墓が増えてゆく

26 蛇が道に死んでいた墓を掘った

27 芍薬の花が重たく咲いている

28 高崎の眼科にゆく朝が早い
(朝早く高崎まで眼科にゆく)

29 僕より森の方が息をしている

30 時々森をずっとじっと見ている

31 また梅雨が来る梅雨の梅雨がまた来る

32 森が聞こえなかったふりをしている
(無線が鳴りまた出たと知らされる日)

33 六月にあかいもみじがあるのです
(もみじの葉がすでにあかくなっている)

34 猫があるじのような顔をして来た

35 這っている毛虫を小鳥が食べない

36 介護休暇になぜか恥ずかしくなる

37 花が終わればまた次の花が咲く
(花は咲く順番をよく知っている)

38 七歳の雌鶏に卵をもらう

39 母にご飯を食べさす朝昼晩

40 雨が降ると猫が遊びに行かない

41 猫がしきりに甘えにくる梅雨空

42 鶏(とり)は天気予報よりも知っている

43 蛙がぺちゃんこになっていた小道

44 散歩する人が減った今年の森

45 たんたんとした静かなラジオがいい
(もり上げようとするラジオの悲鳴だ)

46 新聞を読んだたいした記事がない

47 祖父母の団扇が二枚あるきりです

48 一本道を墓まで歩いてみる

49 きのうの落花生だ湿気ている

50 ラジオを消せば鳥の声が聞こえる

51 昼食に六年もかかってしまう

52 ずいぶん悲しい思いをさせる日だ

53 独活が信じられないほどでかくなる

54 人が皆猫よりずっと病んでいる

55 梅雨寒の神社に祈る人がいる

56 鳥が鳴いている激しく鳴いている

57 猫が獲物をくわえた時の声だ

58 夏至にもう薪の心配をしている

59 好きな方へと伸びてゆく枝と枝

60 飛行機ではありません大鷲です

61 熊がこわくてジョギングができますか

62 ええ昭和三十八年生まれよ

63 カニキュルメールするパリは四十度
(canicule)

64 セラヴィなりコムスィコムサのカイゴかな
(c’est la vie, comme ci comme ça)

65 梅雨と暮らしている雨雨雨雨

66 年取れば青春想う別角度

67 いつも真面目純真の黒猫です

68 手があたたかい冷たくならないでね

69 時々どうしたらよいのかと思う
(誰も注目しない思い入れです)

70 僕はただだめもとで問いかけている

2026年7月7日 小暑・七夕
和田和園

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