Archive for 4 September 2020

連続森の中のリアルタイム童話第2回:「ライのカゾクでびゅー」

Posted in 連続森の中のリアルタイム童話 2020 with tags , , , , , on 4 September 2020 by kenwada

ある芸術家が死んだ後、森の中に遺された十編の青い詩 10 −神の栄光と母のための庭−、2017年7月、北軽井沢 作品 No.289、紙にアクリル、水彩、鉛筆、71.8×77.3cm

連続森の中のリアルタイム童話第2回:「ライのカゾクでびゅー」
語り手:和田 雷
聞き手:和田 健
絵:和田 健
登場人物・動物
・黒猫の子猫で語り手の雷 3ヶ月
・やさしいきれいな猫の楢姉ちゃん 1才
・おばあちゃん
・お父さん
・お母さん
・雌鶏の二三姉ちゃん 5才
・雷が憧れるかっこいい猫のもみ兄ちゃん 1才
・大きな柴犬の喜久姉ちゃん 9才
・獰猛な白鼻心 年齢不明

ライだよ、かぜぐすりもおわったし、はなじるがでなくなったから、ライ、こんばんからはカゾクだぞ、これからはよるはいえですごすんだぞって、けさおとうさんがいってくれたんだ、それまではカンセンショウっていうびょうきが、もみにいちゃんやならねえちゃんにうつらないようにって、ぼくはカクリされていたんだって。それでもってとんでもなくながいひるまがようやくおわって、まちにまったゆうがたになって、さあいよいよカゾクだぞ、これからはどれだけすばらしいんだろうなあって、どあをあけてなかへはいろうとしたら、げんかんのところでならねえちゃんがまっていて、おまえいいかい、カゾクはたすけあわなきゃいけないんだよ、なにごともさいしょがカンジンなんだからね、しっかりやるんだよ、さあがんばっておいでって、ならねえちゃんはぼくのおしりをぽんとねこぱんちでおしてくれたんだ。そしたらぎーってどあがあいて、でんきゅうがきらきらひかってて、ああやっぱりあかるいなあ、これがいえのなかってもんなんだなあとおもったしゅんかん、むこうからおおきなしばいぬのきくねえちゃんがまんめんのえがおでトッシンしてきたんだ、きくねえちゃんはそのままぼくのおなかのしたにはなをつっこんでぽーんとうえにほうりなげたからたまんない、ぼくはにゃーんてはじめてのいえのなかをいきなりとんでろうかのかべにおもいっきりぶつかって、ばたってたおれてきをうしないそうになったんだ。それでもなんとかよろめきながらかうんとえいとでたちあがったんだけれど、またきくねえちゃんがものすごいいきおいでにこにこしながらトッシンしてきてはなをつっこんではほうりなげて、もうきくねえちゃんはうれしくてうれしくてしょうがないっていうかんじで、もうぜんぜんやめてくんなくて、それをそのままさんじゅっぷんもつづけるんだ、さいごはもうぼくもふらふらになってしまって、もうだめだしぬ、なんだ、あこがれのカゾクったって、たったこれだけでもうおしまいかとおもったときに、きくねえちゃんがとつぜんぴたっとやめて、がぶがぶみずをのみはじめたんだ。ぼくはああたすかったとおもって、ぼくものどがからからできくねえちゃんがのみおわるのをまってみずをすこしだけのませてもらったんだ。それにしてもずいぶんてあらいカンゲイだったな、きくはよほどうれしかったんだなって、おとうさんがおかあさんにいっていた。
それからあとはやっぱりおもってたとおり、すんごくたのしくて、みんなでばんごはんをたべて、きょうあったことをおはなして、それからいえのなかにはいってはじめてしったんだけれど、くるまいすにのったおばあちゃんがいて、ならねえちゃんがおとうさんのおかあさんだよってそうっとおしえてくれて、おばあちゃんがまずぼくをひざのうえにだっこしてくれて、つぎにおとうさんがだっこしてくれて、さいごにおかあさんがだっこしてくれて、そりゃもうちゃんとおさらにのったごはんはでるしみずはあるしで、やっぱりカゾクはいいなあとおもって、そうおもったらこれまでのらをしてきたつかれがどっとでちゃって、ザイスのうえであんまりきもちよくてついうとうとしちゃったんだ。
そしたらそのときとってもふしぎなゆめをみたんだ、ぼくはまだのらをしていて、おつきさまやきれいなおほしさまにかこまれて、まいばんねるところはきのむいたところにかってにじゆうにねて、だれにもなんにもいわれないし、でもそういえばともだちはひとりもできなかったな、あとはくびしんってドウモウなやつがよなかにいきなりおそってきたときにはほんとうにふるえあがったな、あのときはぜったいにしぬなとおもった。どこかのあきやのうらにわにほうりだしてあったすのこのしたにもぐりこんでカンイッパツいのちびろいしたんだったっけな。
そのばめんでゆめからめがさめたら、もうだいぶじかんがたってて、となりのならねえちゃんのかごをみたらすーすーねていて、もみにいちゃんもねていて、おばあちゃんもおとうさんもおかあさんもみんなねていて、いえのなかはさっきまでのばんごはんのときとちがって、すっごくしずかでしーんとしているんだ。かべのふるいとけいが、かちっかちってはじめてきくおとをだして、ぼくをさかんにおどかそうとしていたけれど、ぼくはなんだかすっごくふしぎだなあって、またいつものようにひとりでかんがえはじめたんだ。おとこらしいもみにいちゃんのこと、やさしいならねえちゃんとであったこと、おとうさんやおかあさんのこと・・・そのあとぼくはなぜだかじぶんでもよくわからないんだけれど、なんだかとってもあかるいすっきりしたきもちになっちゃって、のそのそとじぶんのかごにもどってそれからあさまでぐっすりねむったんだ。
あさになったら、ならねえちゃんがライ、はやくおきれってぼくをおこしにきて、ミメイににわとりのふみねえちゃんがなくなったっていうんだ、ロウスイだったって。たいへんだ、ふみねえちゃんにはとくにかわいがってもらったからって、すぐにそとにとびだしてみたら、おとうさんがもうにわにおはかをほって、そこにふみねえちゃんをそうっとうめて、それからながいおキョウをしておセンコウをあげていたんだ。おとうさんのよこでもみにいちゃんがきちんとすわってじーっとそれをみていたんだ。そのときもみにいちゃんが、ライ、おまえもこっちへきてちゃんとすわれ、おれたちねこのヒンイがとわれているんだぞって、おおきなこえでぼくにはじめてくちをきいてくれたんだ。おとうさんはぼくがきたのをみて、ふみはごさいだったんだよ、いろいろなことをおしえてくれたたいせつなすばらしいにわとりだった、きっとさいごのばんにライがカゾクになっていえにくるのをまっていてくれたんだねっていったんだ。マイソウがおわってぼくはおとうさんとあるきながら、それはくがつのはじまりのひで、もうあさのくうきはつめたくて、ふみねえちゃんのいなくなったにわとりごやのはしらにあかとんぼがとまっていた。そのときぼくはおもったんだ、もうびょうきなんかしていられない、がんばっていきていかなきゃな、もうのらじゃないんだ、カゾクなんだからって。
(つづく)

今後の不定期の掲載予定:
第3回:「きくねえちゃんのサンポ」
第4回:「もみにいちゃんのハタシアイ」
第5回:「ライのふらんすゴ」(全5話完結)