ドラクロワの三角形を回す

今回は、色の勉強について書きます。

昨日、今描いている「傾いた世界3」の制作をしている時、
青色と金色の素晴らしく美しい対比に気づき感動しました。
特にスマルトブルーについては、際立って美しい対比をみせます。
断るまでもなく、青色の補色は橙色ですが、
この二色の対比については、今後研究してみる価値があると思います。

当たり前のことですが、絵を仕事にしている人で、色の勉強をしていない人は
一人もいないと思います。
ですが、この色の勉強をどのようにするか、進めるかというのは、
根源的な問題に関わる非常に大切なことだと思います。

僕の場合は、フランスのパリ時代に、毎日アカデミーに通って
裸婦のデッサンや油彩をしている内に、
やはりこの色の勉強をクリアーしておかないと、
勘に頼ってやっているだけではどうにもならない、もうこれ以上前には進めない、
という感じになりました。
これも当然そうなることで、めずらしくはない。
そこでまず、アカデミーの帰りにRennesの図書館で、
色の本をあるだけ7、8冊借りてきました。
それをモンマルトルのアパルトモンの部屋で、じっくりと一冊ずつ見て、
まず自分に一番合う本を慎重に一冊決めました。
そして今度はその本をパリの大きな本屋で買ってきて、辞書を使いながら
徹底して全部読み、さらに繰り返しては読み、基礎(原理原則)を頭に入れました。
「Manuel de la COULEUR」というSolar出版から出ている本で、
本当に素晴らしい本です。
こういうのは、学生時代の勉強と似ていて、何冊も問題集をやるよりも、
自分に合う一冊を繰り返した方が力がつく(効果がある)と思います。

基礎ができたところで、実地の応用に入りました。
僕はこの応用をHenri MATISSEの絵で勉強しました。
MATISSEを選んだことは、今でもいい判断(正解)だったなと思います。

話がそれますが、僕はMATISSEのことを天才と呼んではいけないと思っています。
MATISSEのことは、いつもきちんと大天才と呼ばないといけない、そういう人。
彼は天才ではなくて大天才。
ちなみにフランス絵画史の中で、Eugène DELACROIXという巨星がいるので、
時代をDELACROIX以降と限れば、
最大の芸術家は誰か?という問いに答えるのはとても簡単で、Claude MONETです。
最大の天才は誰か?という問いに答えるのも簡単で、Henri MATISSE。
では最も才能があったのは誰か?この辺りからが骨のある答えがいのある問いになると思います。
僕は晩年の作品をのぞき、ワイン商から画家に転じたJean DUBUFFETだと思います。

MATISSEはその晩年に至るまで、実に基本通りに、
これでもかというくらい几帳面に基本通りに色を使いました。
ですから色の勉強をMATISSEの絵ですることはとてもよいことだと思います。
初めは、Centre Pompidouの実物の作品や画集の絵を前にして、
赤だから隣は緑、黄色だから隣は紫、青の横だから橙、
・・・と一つ一つやっていく訳です。

この「読み解き」ができるようになった頃と並行して、ちょうどアカデミーの方でも、
Modèl vivant(モデルポーズ)を前に、制作が追いつかない、
昔学校の美術室に貼ってあったり、画家のアトリエによくあるあの円形の12色相環
ではとてもでないが、スピードが間に合わない、という問題が出てきました。
あのようなものは部屋に飾る分には見た目もよいのですが、実践的ではありません。
そこで、僕が使い出したのは、ドラクロワが手帳に書き留めていた三角形です。
これも確かパリの図書館で借りてきた本で見ました。
咄嗟に「あ、これはすごい、使える!」と感じました。
以降、個人的に「ドラクロワの三角形」と呼んで、今日まで僕の頭の中の宝物になっています。
ドラクロワの三角形を使用し始めてから、アカデミーのモデルポーズを前にした
あの緊迫した状態の中でも何とか対応できるようになりました。
ドラクロワの時代に、これを手帳に書き留め、実地の表現等にすでに使っていた
というのは、印象派の遥か先を行くすごいことだと思います。
その流れをたどっていくと、ベラスケスからやっぱりと言うべきかレンブラントに
たどり着きますが、この話はまた別の時にします。
ドラクロワには、この他にも、画家にとって大切なことは、毎日、庭の洗濯物を
見ることだという至言もありますが、これもまた別の時に。

ドラクロワの三角形について説明します。
正三角形ABCを書き、Aに赤、Bに黄、Cに青を置きます。
辺ABの中点が橙、辺BCの中点が緑、辺ACの中点が紫です。
また自分で、3本の垂直二等分線の交点が黒、
正三角形ABCの外周に大きな円を書き、円周外側が白と加えていきました。

MATISSEの絵の読み込みをしていると、
実はMATISSEは三角形ABCを微妙にスライドさせて、
三角形A′B′C′のような三角形をいくつも作っていることに気づきました。
すなわちAの赤、Bの黄、Cの青を何種類ももっていて、三角形をいくつもつくり、
線分A′Cのような新しい線分で組み合わせを増やしてくるのです。
この辺り、実際に紙や黒板上で図示しながら説明できないのがもどかしいです。
これを個人的に「チャンネルを回す」と呼んでいます。
このチャンネルを回すという感覚をつかめたことは、以降とても大きかったと思います。
昔のテレビのチャンネルのイメージで、
右回り、左回りにチャンネルを自由自在に回してくるのです。
これがわかってから、三原色の赤、黄、青の種類をできるだけ多くもつように、
すなわち三頂点の位置を少しだけずらしながらできるだけ多くの三角形を
書けるように準備しました。

MATISSEで勉強した後、次にPierre BONNARDの絵で色の勉強をしました。
MATISSEの生涯基礎基本原則通りに比べると、
BONNARDは補色の位置を微妙な距離をおいて離していたり、読み解きに時間がかかります。
どんなにすごい人でも、すぐにさっさとわかるという人は、僕はいないと思います。
でもこれに没頭して、少しは前に進めたかな。

以降は、美術館や画集でたくさんの新しい絵を観て読み解く、この繰り返しです。
でももう基礎ができているので、絵を集中して観ていて、読み解くことが
最終的にできないということはなかったように思います。
やはり最初の本で基礎を学ぶところ、
それをMATISSEの絵で実地に応用するところ、この辺りが大変でした。
僕は色の勉強をこのようにしてきました。

2012年6月16日(土)
和田 健

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